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アジソン病の患者さん家族に、ほかのホルモン疾患の合併について質問をうけたことが発端で少し疾患を広げて調べてみます。というのも当院には本当にいろいろな疾患の患者さんが入院してくること、一部の先天的疾患として我々が30年以上前に学んだ疾患の患者さんも長生きしたり疾患の亜型が報告されていて、まれな疾患でも調べる必要があるなと感じるこの頃です。知らない疾患は診断できませんから。
今回はアジソン病の病因と併発疾患について調べてみます。
アジソン病の原因には、感染症あるいはその他の原因及び特発性に分類されます。感染症では結核性が代表的です(いまだにそうなのかと驚きました!)が、真菌性や後天性免疫不全症候群(AIDS)に合併するものが増えています。特発性アジソン病は自己免疫性副腎皮質炎による副腎皮質低下症ですが、しばしば他の自己免疫性内分泌異常を合併し、多腺性自己免疫症候群(APS)と呼ばれています。ここで前回かいたMEN(多発性内分泌腫瘍)を思い出すのです。なぜ複数の自己免疫しかも内分泌異常をきたすのでしょうと。これって遺伝子が近いのか、あるいは発生と関係するのでしょうかしらとおもってしまいます。
さてその複数の内分泌異常をきたす疾患に名前がついています。
アジソン病に特発性副甲状腺機能低下症、皮膚カンジダ症を合併するⅠ型(HAM症候群)と、アジソン病に橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患を合併するⅡ型(Schmidt症候群)があります。これらについてまとめてみます。
HAM症候群というと、HAM:HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1のキャリアにみられる慢性進行性の痙性脊髄麻痺)と思ってしまいますが、これは別です。HAMといれるとこの疾患ばかりがでてきます。
HAM症候群がどう発見されたかについて少し述べてみます。
多腺性自己免疫症候群(autoimmune polyglandular syndrome; APS)という病態があります。1926 年にAddison病と慢性甲状腺炎の合併が報告され,後にSchmidt症候群と名付けられました。1929 年にはTalbotは特発性副甲状腺機能低下症(IHP)とAddison病の合併症例が家族内集積することを,Sulphinは特発性副甲状腺機能低下症(IHP)とカンジダ症(モニリア症)との合併症例の家族内集積を初めて報告した.1968 年には,SpinnerらはさらにIHP,Addison病,カンジダ症の 3 者の合 併 症 例 を 報 告 し,後 にhypoparathyroidismAddison-monilia syndrome(HAM症候群)として独立した疾患概念となりました。(日内会誌 96:696~701,2007より)HAM症候群は3-5歳に発症とされますが、Schmidt症候群は成人発症です。Neufeldらの224例のSchmidt症候群の報告では、アジソン病を100%もっていますが、インスリン依存性糖尿病合併52%、自己免疫性甲状腺疾患合併69%とあります。(Neufeld M, et al : Two types of autoimmune Addison’s disease associated with different polyglandular autoimmune(PGA)syndromes. Medicine(Baltimore) 60 : 355―362, 1981. 6)
やはり患者さんがいったように、成人発症のアジソン病では、原因としての感染症を調べるとともに、糖尿病、甲状腺疾患は合併を疑い検査してみる意義はありそうです。
田中江里
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