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2025.02.25ブログ

アジソン病と併存疾患3 まれですが副腎白質ジストロフィー

さてアジソン病とその他の免疫的なホルモンの病気の合併について患者さん家族から質問をうけて調べてきたわけですが、そこで目にとまったのがこれまたアジソン病に関係する、副腎白質ジストロフィー(ALD)いう病気でした。

これは、先天的な遺伝性疾患(X連鎖劣性遺伝性疾患)で、医学生の頃に小児科で学んだのみで、しかもとても特殊なまれな疾患という記憶しかありませんでした。今では遺伝子異常がみつかりABCD1遺伝子に異常があってALDPと呼ばれるタンパク質の機能不全が生じることがわかっています。それにより飽和極長鎖脂肪酸の細胞内への移送がうまくいかず、細胞内に蓄積する疾患です。ここまでなら、遺伝子の病気で、先天性疾患でおわってしまうところですが、実はいろいろな型があり、成人発症の型もあるとのこと。知らなかったら診断できないので、少し調べてみましょう。

 副腎白質ジストロフィー(ALD)は、中枢神経の白質や副腎に障害をきたす疾患で、多彩な臨床型を有していて次のようなものがあります。

小児大脳型(childhood cerebral ALD;CCALD)

  • 小児大脳型は3~10歳で発症し、大脳半球に進行性脱髄と副腎機能不全をきたします。性格・行動変化、視力・聴力低下、知能障害、歩行障害などの症状が現れます。大脳白質のびまん性脱髄がおきます。これは小児科の先生にお任せです。
  • adrenomyeloneuropathy(AMN):AMNは20歳以降に発症し、痙性歩行、失禁、勃起不全などの症状が現れます。10年くらいして大脳型に移行していきます。これは若くして歩き方がおかしい人に考える疾患ですが、これも神経内科の先生にお任せです。でも歩き方がおかしくなったと内科外来にきたときに鑑別で覚えておくといいかもしれません。(でも忘れてしまいそうです)
  • 成人大脳型(adult cerebral ALD;ACALD):成人で発症し、性格変化、知能低下、精神症状などの症状が現れます。精神科にいきそうです。
  • 小脳・脳幹型 日本人に多いことが特徴で、小脳失調によるふらつき歩行など。2年で大脳型に移行します。
  • アジソン型:なんとこれは副腎不全症状のみです。2 歳以降から成人期にかけて特異的な症状ではない易疲労感,全身倦怠感,脱 力感,筋力低下,体重減少,低血圧や,色素沈着で発症する.また,食欲不振や 悪心 ・ 嘔吐,下痢等の消化器症状,精神症状(無気力,不安,うつ)など様々な症状も訴える.7 歳頃の発症が多いが,その後,CCALD や AMN などに進展することがあり,注意を要する.鑑別として重要な症状である色素沈着は,皮膚,肘 や膝などの関節部,爪床,口腔内にみられる.

日本人の病型別の発症頻度では,小児大脳型(CCALD) 29.9 %,思春期 大脳型(adolescent cerebral ALD;AdolCALD) 9.1 %,AMN (痙性歩行)25.3 %,成人大脳型(ACALD) 21.4 %, 小脳・脳幹型 8.4 %,発症前 4.5 % という結果でした。欧米に比べ日本ではACALD が多く, 小脳・脳幹型の多さも日本人の特徴とされているそうです。一方,本調査ではアジソン型 の症例はなく,欧米でのアジソン型が 6 ~ 14 % を占めることから,国内ではアジソン型は見逃されている可能性も十分あり、我々内科医の認知が必要だと思います。通常はX染色体に関連する遺伝であるため、Xが1本しかない男性に発症する疾患ですが、女性保因者も加齢とともに脊髄や末梢神経障害、尿・便失禁などの症状が現れる場合があるようです。40歳台で81%という報告があります。日本先天代謝異常学会からガイドラインがでております。参考文献:副腎白質診療ガイドライン 2019

次回は 発熱時に血尿が・・・ Alport症候群

田中江里

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