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2023.11.29ブログ

ナンキンハゼの季節

寒くなってきました。当院のそばの公園に、ナンキンハゼが生えていて、たくさんの実をつけています。
ナンキンハゼは中国原産の樹木で、英語でChinese tallow tree、学名はTriadica sebiferaといいます。”tallow”とは、”牛脂”という意味です。ナンキンハゼは、約300年前に中国から渡来した国外外来種です。果実から油やロウが抽出できます。特に7-9月にかけて急速に含油量が増加し、特徴的な白い実をつけます。古くからロウソク、石鹸、軟膏、照明用油などとして日常生活の中で利用されてきました[1]。日本全国でよく見かける樹木の一つです。
アメリカ合衆国では、1772年に導入されてから爆発的に繁殖し、“invasive”な外来種であるとされ、” one of the worst invasive species”と呼ばれるほど増殖してしまい、管理の対象になっているようです[2][3]。除草しようにもコストの問題もあり難しいとされています。日本では特定外来生物の指定は受けていないようですが、強い繁殖力を持つにも関わらず、シカの採食対象にならないので、強い侵略性と定着性で生態系に影響を与えるとして懸念されています。ヒトが繁殖を制限しなければ生態系に悪栄養があると考えられているのです[4]。
一方でナンキンハゼの葉は中国では鳥類や魚類の細菌感染症の治療に使用されています[2]。また、ナンキンハゼの樹皮や葉の抽出液が、マメ科の樹液吸汁害虫として悪名高いマメアブラムシ(学名:Aphis craccivora Koch)に対する神経毒性や、消化/成長に関連する酵素の阻害、cytochrome P450や、コリンエステラーゼなどの解毒に関連する酵素の阻害作用をもたらし、殺虫活性を示したとする報告もあります[3]。
繁殖力が高く侵略的な樹木という反面、人の生活に利益をもたらしてきた有難い樹木でもあるわけです。これからもそばを歩くたびに感謝の気持ちをもって、観察してみようと思いました。

[1] 河内進策, 樹木がつくる油脂資源, 宮崎大学農学部研究報告, 2007, 53巻, 1号, p.11-19
[2] Wheeler, G., & Ding, J. (2014). Is Chinese Tallowtree, Triadica sebifera, an Appropriate Target for Biological Control in the United States? Invasive Plant Science and Management, 7(2), 345-359. doi:10.1614/IPSM-D-13-00061.1
[3] Gao, R., Su, Z., Yin, Y. et al. Germplasm, chemical constituents, biological activities, utilization, and control of Chinese tallow (Triadica sebifera (L.) Small). Biol Invasions 18, 809–829 (2016). https://doi.org/10.1007/s10530-016-1052-2
[4] 前迫ゆり, 照葉樹林に侵入した外来木本種の拡散にニホンジカが与える影響, 日本生態学会誌, 2022, 72巻, 1号, p.5-

当院を背景に、ナンキンハゼ

 

文責:チーフレジデント Yo Ishihara

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