ニュース
NEWS
NEWS
発熱時に血尿がでる病気は何だ?
といったら、まずは尿路感染症、腎結石、膀胱炎、まれに腎臓がんなどを考えます。ほかに扁桃腺の痛みや咽頭痛後1-2週間で血尿がみられる疾患として急性糸球体腎炎、またIgA腎症では38度以上の高熱がでたときにコーラ色のような肉眼的血尿発作がおきることがあります。血液内科医の私としては、コーラ色の尿というとPNH(夜間発作性血色素尿症)を考えてしまいますが、IgA腎症でもおきるのですね。
さてもうひとつ発熱時などに肉眼的血尿をきたす疾患としてアルポート(Alport症候群)があります。アルポート症候群(Alport症候群)は慢性腎炎、難聴、眼合併症を呈する遺伝性の症候群で、しばしば末期腎不全へと進行します。腎臓の糸球体という部分を構成するのに重要な蛋白であるIV型コラーゲンのα3鎖、α4鎖またはα5鎖を作るための情報を持っているCOL4A3、COL4A4、COL4A5遺伝子のいずれかに変異がある場合発症します。これらの蛋白は内耳や眼にも存在するため、難聴や眼症状を合併します。学生の頃に学んだときには、難聴と腎不全を発症する病気として小児科で覚えたものです。難聴は幼少時まではなくて10歳以降にでてくるということも興味深いところです。びまん性平滑筋腫は非常にまれな合併症で食道に最もよく見られるようです。
Alport症候群の原因遺伝子が解明されています。最も頻度の高いCOL4A5遺伝子の変異に伴うX染色体連鎖型アルポート症候群(全体の75%)ではほとんどの場合、ご家族に腎炎の患者さんがいます。肉眼的血尿が熱とともに繰り返すようなら腎炎の家族歴をきくことが大切ですね。そしてX染色体が1つしかない男性患者さんでは女性患者さんに比べて重症の症状を呈します。しかし、約10%の患者さんでは家族歴がなく、遺伝子の突然変異(常染色体性)により発症します。
タイプにより腎不全にいたる年齢が異なります。X染色体連鎖型は全体の75%で、平均的に男性では35歳、女性では65歳で末期腎不全に至ります。常染色体劣性は全体の10%、平均的には男女ともに21歳で、また常染色体優性は全体の15%で平均的に男女ともに60歳で末期腎不全に至ります。常染色体優性型は症状が軽いため、診断されていない患者さんが多くいると考えられているようです。
これまで良性家族性血尿といわれていた一部がAlport症候群の常染色体劣性遺伝型と考えられているようです。血尿のみ、軽度の蛋白尿のみの中にもこのような疾患があるということですね。
(難病情報センター Alport症候群より)
田中江里
PAGE TOP