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2025.02.16ブログ

PNHと血栓症

PNH(発作性夜間血色素尿症)という病気をご存じでしょうか。血液内科医でもみたことがないことがあるほど、まれな疾患です。日本では平成10年度の厚生労働省の調査によると、PNHの推定有病者数は430人(100万人あたり3.6人)と報告されています。男女比はほぼ1:1で、診断時の平均年齢は、日本が45.1歳で米国の32.8歳に対して有意に高く、日本では20~60歳代に多くまんべんなく発症します。再生不良性貧血から移行したりすることもあります。その病態は先天性の疾患ではなく、後天的に(生まれたあと)PIG-A遺伝子という遺伝子に変異が起こり、その変異細胞がクローン性に拡大する造血幹細胞疾患です。 PIG-A遺伝子は、Glycosyl phosphatidylinositol(GPI)アンカーの生合成に必須な遺伝子です。GPIアンカーって?と思われますでしょう。それは細胞表面にタンパク質がつくうえで必要な蛋白質です。 実際どう病気がおきるのかというと、常に補体の攻撃に曝されている赤血球は、健常者の場合、赤血球膜上のGPIアンカー型補体制御因子であるCD59やCD55により保護されていますが。 GPIアンカーの生合成に異常のあるPNH赤血球では、CD59やCD55の全部あるいは一部が欠損しているため、感染症などを契機とした補体の活性化により溶血(赤血球がこわれること)を起こします。

PNHは溶血を起こし、夜間にコカ・コーラ色のような肉眼的血尿をおこすことがしられていますが、合併症としての血栓症が重要です。この血栓症は、他の溶血性貧血にはないPNH特異的な合併症であり、PNHの主要な死因の一つです。

PNH患者のうち17%(国内)に臨床症状を伴う血栓症が認められ、 静脈血栓症や動脈血栓症はPNHに関連した死因の約40~67%を占めます。血栓症の発症機序についてはまだ十分に解明されていませんが、血管内溶血で発生する遊離Hbが直接あるいはNO吸着作用を介して血栓形成の引き金になり得ると考えられていますし、また、CD59欠損による血小板活性化なども示唆されています。

まれな血液疾患、しかし重要な血栓症合併症について述べてみました。

田中江里

参考:日本PNH研究会ホームページから。

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